イーサリアム(ETH)は、ビットコインに次ぐ時価総額を誇る人気の暗号資産(仮想通貨)です。しかし、単なるデジタル通貨ではなく、スマートコントラクト機能を持つプラットフォームとして設計されており、DApps(分散型アプリケーション)の開発や独自トークンの発行が可能なのが特徴です。本記事では、イーサリアムの基本的な概念から特徴、仕組み、歴史、将来性、そして購入方法まで、初心者の方にもわかりやすく解説します。イーサリアムを理解して、暗号資産投資やWeb3.0の世界への一歩を踏み出しましょう。

イーサリアム(ETH)とは
イーサリアム(Ethereum)とは、2013年にロシア系カナダ人のプログラマー「ヴィタリック・ブテリン」により考案された分散型プラットフォームです。イーサリアムのブロックチェーン上で使用される暗号資産(仮想通貨)をイーサ(ETH)と呼びます。日本では一般的に、プラットフォームとしての「イーサリアム」も暗号資産としての「イーサ」も区別せず、どちらも「イーサリアム」と表現されることが多いです。
2015年7月に正式にリリースされたイーサリアムは、スマートコントラクト機能を搭載したブロックチェーンプラットフォームとして、ビットコインに次ぐ時価総額第2位の暗号資産に成長しました。2024年現在、イーサリアムは世界中の主要な暗号資産取引所で取引され、多くの分散型アプリケーション(DApps)や金融サービス、NFT(非代替性トークン)の基盤技術として広く活用されています。
ビットコインが単純な価値の移転や決済を主な目的としているのに対し、イーサリアムはより複雑なプログラムやアプリケーションを構築できるプラットフォームとして設計されました。そのため、イーサリアムは「プログラム可能なお金」あるいは「世界のコンピューター」とも呼ばれています。
項目 | 情報 |
---|---|
名称 | イーサリアム |
ティッカーシンボル | ETH |
ブロックチェーン | イーサリアム |
時価総額 | 2位 |
コンセンサスアルゴリズム | プルーフ・オブ・ステーク(Proof of Stake/PoS) |
発行上限 | なし(無制限) |
イーサリアムの基本情報
イーサリアムはブロックチェーン技術を基盤とした分散型プラットフォームで、従来の中央集権的なシステムとは異なり、世界中に分散したコンピューターネットワークによって運営されています。このネットワーク上で暗号資産であるイーサ(ETH)が使用され、取引手数料や報酬として機能しています。
特筆すべき点として、イーサリアムには発行上限が設定されていない点があります。ビットコインが2100万BTCという上限を持つのに対し、イーサリアムは理論上無制限に発行可能です。ただし、2021年8月に実施されたロンドンハードフォークにより、取引手数料の一部を「バーン(焼却)」する仕組みが導入され、流通量の適正化が図られています。
また、2022年9月には「The Merge(ザ・マージ)」と呼ばれる大型アップデートにより、イーサリアムは従来のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へとコンセンサスアルゴリズムを移行しました。この移行により、エネルギー消費量が約99.95%削減されたとされ、環境負荷の軽減とスケーラビリティの向上が実現しています。
イーサリアムの開発者「ヴィタリック・ブテリン」とは
イーサリアムを開発したヴィタリック・ブテリンは、1994年1月31日にロシアのコロムナで生まれ、6歳の時にカナダに移住しました。幼少期から非凡な才能を持ち、小学3年生の頃から数学とプログラミングに強い興味を示していたといわれています。
17歳の時に父親の勧めでビットコインを知ったブテリンは、その後自身でビットコインについて深く研究し、「ビットコインマガジン」を共同設立するなど、若くして暗号資産業界で活躍するようになりました。彼はビットコインの可能性に魅了される一方で、より汎用的な用途に使えるブロックチェーンの必要性を感じていました。
そして2013年、わずか19歳という若さでイーサリアムの構想をホワイトペーパーとして発表しました。翌2014年には資金調達を行い、約15億円相当のビットコインを集めることに成功。2015年7月に正式にイーサリアムがリリースされました。
ブテリンの先見性と技術的貢献により、彼はフォーチュン誌の「40 under 40」やフォーブス誌の「30 under 30」に選出され、2021年には27歳という若さで資産が10億ドルを突破し、史上最年少のクリプト長者の一人となりました。現在も、イーサリアムの開発と進化に中心的な役割を担っています。
ブロックチェーンプラットフォームとしてのイーサリアム
イーサリアムの最大の特徴は、単なる暗号資産ではなく、分散型アプリケーション(DApps)を開発・運用するためのプラットフォームとして機能する点です。イーサリアムのブロックチェーン上では、スマートコントラクトと呼ばれる自己実行型のプログラムを組み込むことができ、これにより多様なアプリケーションやサービスの開発が可能になっています。
イーサリアムのブロックチェーンは、従来のデータベースと比較して以下の利点を持っています
イーサリアムブロックチェーンの特徴
- データの改ざんが極めて困難
- 中央管理者が不要で、分散型のネットワークで運営
- 取引の透明性が高く、誰でも検証可能
- プログラム可能なスマートコントラクトによる自動執行
- 世界中どこからでもアクセス可能なグローバルインフラ
こうした特性により、イーサリアムは金融サービス、ゲーム、芸術、不動産、身分証明など、様々な分野でのアプリケーション開発に活用されています。例えば、分散型金融(DeFi)サービスでは、銀行などの仲介者なしに融資や資産運用ができるプラットフォームが構築されています。また、NFT(非代替性トークン)の分野では、デジタルアートの所有権を証明するプラットフォームとして広く採用されています。
このように、イーサリアムは単なる決済手段を超え、新しいデジタル経済の基盤技術として機能しています。ブロックチェーン上でプログラムを実行できるという特性が、イーサリアムをビットコインなど他の暗号資産と一線を画す存在にしているのです。

イーサリアム(ETH)の特徴・仕組み
イーサリアム(ETH)は単なる暗号資産ではなく、様々な革新的な特徴と仕組みを持つプラットフォームです。イーサリアムを理解する上で重要な特徴として、スマートコントラクト機能、独自のトークン規格「ERC」、分散型アプリケーション(DApps)の基盤、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行、NFTプラットフォーム、DeFi構築基盤などが挙げられます。これらの特徴について詳しく見ていきましょう。
イーサリアムの主要特徴
- スマートコントラクト機能
- 独自のトークン規格「ERC」
- 分散型アプリケーション(DApps)の基盤
- プルーフ・オブ・ステーク(PoS)へのコンセンサスアルゴリズム移行
- NFT(非代替性トークン)発行プラットフォーム
- DeFi(分散型金融)構築プラットフォーム
スマートコントラクト機能
イーサリアムの最も革新的な特徴は、スマートコントラクト機能です。スマートコントラクトとは、プログラムで定義された条件が満たされると自動的に実行される契約のことで、イーサリアムの仕組みを理解する上でとても重要な特徴となります。
スマートコントラクトはプログラミング言語「Solidity(ソリディティ)」などで記述され、条件や実行内容を定義します。一度ブロックチェーン上にデプロイ(展開)されたスマートコントラクトは、変更や削除ができないため、高い信頼性と安全性を持ちます。
スマートコントラクトの処理は以下の5ステップで進みます
スマートコントラクトの処理ステップ
- 契約の作成:契約条件をプログラムコードで記述。これはデジタル世界での契約書作成に相当
- ブロックチェーンへの登録:作成したコードをブロックチェーンに登録し、公開台帳に記録
- 条件の監視:契約実行の条件が満たされるのを自動的に監視
- 契約の自動実行:条件が整うとプログラムが自動的に動作し、契約内容が実行される
- 結果の記録:実行結果をブロックチェーンに記録し、改ざん不可能な形で永久保存
イーサリアムのスマートコントラクト機能には、以下のようなメリットがあります
- プログラムによる自動執行:契約条件が満たされると自動的に実行され、効率的で信頼性の高い取引が可能に
- 高い透明性:ブロックチェーン上の契約内容が誰でも確認できるため、取引の透明性が大幅に向上
- 高いセキュリティ:改ざんが極めて困難で、不正やエラーのリスクが大幅に軽減
- 仲介者の排除:第三者を介さずに取引ができるため、コスト削減や処理時間の短縮が実現
例えば、仮想通貨のエアドロップは特定の条件を満たすと無料でトークンがもらえる仕組みですが、これはスマートコントラクトで自動化されていることが大半です。また、クラウドファンディングや保険、資産管理など、様々な金融サービスでもスマートコントラクトが活用されています。
スマートコントラクトとは?
スマートコントラクトとは「人の手を介さずに契約内容を自動で実行する仕組み」のことです。より厳密には、あらかじめ設定された条件に従って、ブロックチェーン上のトランザクション(取引)やブロックチェーン外から取り込まれた情報をトリガーにして実行されるプログラムを指します。コードはブロックチェーン上に保存されるため、一度デプロイされると変更や停止が不可能で、プログラムされた通りに必ず実行されます。
独自のトークン規格「ERC」
イーサリアムの重要な特徴の一つが、独自のトークン規格「ERC」(Ethereum Request for Comments)です。この規格によりイーサリアムネットワーク上で様々な種類のトークンを作成することが可能になり、多くの上場予定の仮想通貨でもこのERC規格が使われています。
主要なERC規格には以下のようなものがあります
- ERC-20:代替可能トークンの主要規格。多くの仮想通貨やユーティリティトークンに採用される一般的な規格
- ERC-721:NFTの標準規格でデジタルアートやゲーム内アイテムなど、唯一無二の資産に使用される
- ERC-1155:ERC-20とERC-721の特徴を統合した柔軟な規格
- ERC-4626:収益性のある金融商品のための標準規格
これらの規格により、開発者は既存のインフラを活用して新しい草コインを迅速に作成でき、ユーザーは異なるプラットフォーム間でトークンを容易に移転できるようになりました。互換性のあるトークン規格は、エコシステム全体の発展に大きく貢献しています。
イーサリアムのERC規格に基づいて作成された有名な仮想通貨やミームコインは以下の通りです
トークン名 | 規格 | 特徴 |
---|---|---|
テザー(USDT) | ERC-20 | 米ドルと1:1の価値を維持するステーブルコイン |
シバイヌ(SHIB) | ERC-20 | 急速に人気を集めたミームコイン |
USD Coin(USDC) | ERC-20 | 米ドルと1:1の価値を維持するステーブルコイン |
チェーンリンク(LINK) | ERC-20 | ブロックチェーンと現実世界のデータを連携するオラクルネットワーク |
分散型アプリケーション(DApps)の基盤
イーサリアムが持つスマートコントラクトにより、DApps(分散型アプリケーション)の開発プラットフォームとして機能させられるのもイーサリアムの特徴です。DAppsは中央管理者がおらず、ブロックチェーン上で動作するアプリケーションのことを指します。
これにより透明性が高く検閲耐性のあるサービスを提供することが可能になります。ゲーム、ソーシャルメディア、金融サービスなど、多様なDAppsがイーサリアム上で開発されています。
例えば、Uniswap(ユニスワップ)と呼ばれる仮想通貨のIDOに使われる分散型取引所(DEX)は、イーサリアムブロックチェーン上に構築されている取引所として有名で、以下の特徴を持ちます
Uniswapの特徴
- 自動マーケットメイカー(AMM):中央管理者不在で自動的に取引を成立させられる
- トークン交換:ユーザーは様々なERC-20トークンを直接交換できる
- 流動性提供:ユーザーは流動性プールにトークンを提供し、取引手数料の一部を報酬として受け取れる
- ガバナンストークン:独自のIDO仮想通貨UNIを保有することで、プラットフォームの意思決定に参加できる
DAppsではゲームの構築も可能です。Axie Infinityはブロックチェーン技術を活用したNFTゲームで、以下の特徴を持ちます
- NFTベースのキャラクター:プレイヤーはAxieと呼ばれるNFTキャラクターを育成し、バトルを行う
- プレイ・トゥ・アーン:ゲームを通じて仮想通貨を獲得でき、現金化も可能
- 育成と繁殖:Axieを育成し、新しいAxieを生み出すことができる
- 土地所有:ゲーム内の土地をNFTとして所有し、開発できる
- コミュニティ主導:プレイヤーコミュニティが大きな役割を果たし、ゲームの発展に貢献
これらのDAppsは中央管理者不在の分散型システムを実現しており、金融やゲームなど様々な分野に新しい可能性をもたらしています。また、透明性が高く、検閲に強いという特性から、従来のアプリケーションにはない価値を提供しています。
DApps(分散型アプリケーション)とは?
DApps(Decentralized Applications)とは、中央集権的な管理者が存在せず、ブロックチェーン上で動作するアプリケーションのことです。従来のアプリケーションではサーバーやデータベースが特定の企業や団体によって管理されていましたが、DAppsではネットワーク参加者全員で分散管理されます。これにより、単一障害点がなく、検閲耐性があり、透明性の高いサービスが実現されます。
プルーフ・オブ・ステーク(PoS)への移行
2022年9月、イーサリアムは従来のプルーフ・オブ・ワーク(Proof-of-Work/PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(Proof-of-Stake/PoS)へと移行しました。この移行は「The Merge(ザ・マージ)」と呼ばれる大型アップデートによって実現し、イーサリアムのエネルギー効率と拡張性を大幅に向上させました。
両者は混同されやすい概念なため、以下の表にて違いをまとめました:
項目 | プルーフ・オブ・ワーク(PoW) | プルーフ・オブ・ステーク(PoS) |
---|---|---|
合意形成方法 | 計算能力による競争 | 保有量に基づく割当 |
エネルギー消費 | 非常に高い | 比較的低い(約99.95%削減) |
トランザクション速度 | 遅い(約15秒) | 速い(数秒〜数分) |
セキュリティ | 51%攻撃に弱い | 大量保有者による中央集権化リスク |
代表的な暗号資産 | ビットコイン、ライトコイン | イーサリアム、エイダコイン |
プルーフ・オブ・ワーク(PoW)は、マイナーが複雑な数学的問題を解くことで新しいブロックを生成し報酬を得ます。これが一般に仮想通貨のマイニングと呼ばれる方法で、高い計算能力が必要になります。セキュリティは強固ですが、エネルギー消費が大きいのが課題です。
一方でプルーフ・オブ・ステーク(PoS)は、仮想通貨の保有量に応じて新ブロックの生成権を得るコンセンサスアルゴリズムです。参加者は自分のETHをステーキング(預け入れ)することでネットワークの安全性を維持し、その報酬を得ることができます。PoWに比べエネルギー効率が高く、より速い取引処理が可能というメリットがあります。
この変更により環境への負荷を軽減しただけでなく、PoSへの移行はイーサリアムのスケーラビリティと処理速度の向上にも寄与しており、より効率的で持続可能なブロックチェーンエコシステムが実現しました。
NFT(非代替性トークン)発行プラットフォーム
イーサリアムは、NFT(非代替性トークン)の発行プラットフォームとしても広く利用されています。NFT(Non-Fungible Token)とは、「偽造できない所有証明書付きのデジタルデータ」のことで、唯一無二の価値を証明するトークンです。
NFTは主にERC-721やERC-1155といったイーサリアムのトークン規格を使用して作成されます。これらの規格により、デジタルアート、音楽、ゲーム内アイテム、コレクタブル、不動産の権利証など、あらゆるデジタル資産やリアルアセットの所有権を証明することが可能になりました。
従来のデジタルデータは、簡単に複製が可能であり、オリジナルと複製の区別が困難でした。しかしNFTは、ブロックチェーン上でそのデータの唯一性や所有権を証明できるため、デジタルアート市場などで大きな革命をもたらしています。
2021年3月には、デジタルアーティストBeepleのNFTアート「EVERYDAYS: THE FIRST 5000 DAYS」が約69,346,250ドル(約75億円)で落札され、NFT市場の可能性を世界に示しました。このようなNFT革命の基盤となっているのがイーサリアムなのです。
NFTの主な特徴は以下の通りです
NFTの特徴
- 唯一無二:同一のNFTは2つと存在しない
- 分割不可能:1つのNFTを分割して所有することはできない
- 所有権の証明:ブロックチェーン上で所有権が明確に記録される
- 譲渡可能:二次流通市場で売買することが可能
- 永続性:ブロックチェーンに記録されるため、発行元企業が消滅しても存続
イーサリアム上のNFTマーケットプレイスとしては、OpenSea、Rarible、Foundation、SuperRareなどが有名で、これらのプラットフォームを通じて、世界中のクリエイターが自分の作品をNFTとして販売し、収益を得ることができるようになりました。
DeFi(分散型金融)構築プラットフォーム
イーサリアムの重要な機能として、DeFi(分散型金融)構築プラットフォームとしての役割があります。DeFi(Decentralized Finance)とは、銀行や証券会社などの中央集権的な金融機関を介さずに、ブロックチェーン上で金融サービスを提供するエコシステムのことです。
従来の金融システム(CeFi:中央集権型金融)では、銀行などの仲介者が必要でしたが、イーサリアムのスマートコントラクトを活用したDeFiでは、これらの仲介者なしに直接ユーザー間(P2P)で金融取引が可能になりました。
イーサリアム上で構築されている主なDeFiサービスには以下のようなものがあります
- DEX(分散型取引所):Uniswap、SushiSwap、Curve Financeなど
- レンディングプロトコル:Aave、Compound、MakerDAOなど
- ステーブルコイン:DAI、USDC、USDTなど
- デリバティブ:Synthetix、dYdXなど
- 保険:Nexus Mutual、Etherisc、InsurAceなど
- 資産管理:Yearn.finance、Balancerなど
DeFiの革新的な点は、これらのサービスが相互に組み合わせられる「コンポーザビリティ(組成性)」を持っていることです。この特性は「マネーレゴ」と呼ばれ、各DeFiプロトコルがレゴブロックのように組み合わせられ、より複雑で高度な金融サービスを構築できます。
従来の金融(CeFi) | 分散型金融(DeFi) |
---|---|
中央集権的な管理 | 分散型の管理(ガバナンストークンによる投票など) |
第三者機関による仲介 | スマートコントラクトによる直接取引 |
KYC/AML手続きが必須 | 誰でもアクセス可能(許可不要) |
営業時間の制限あり | 24時間365日利用可能 |
透明性に限界あり | すべての取引が公開され検証可能 |
このようなDeFiの発展により、金融サービスへのアクセスが制限されていた世界中の人々に新たな機会を提供し、より包括的で透明性の高い金融システムの構築が進められています。また、従来の金融システムよりも効率的で低コストなサービスを実現する可能性も秘めています。

イーサリアムとビットコインの違い
イーサリアムとビットコインは、暗号資産市場において時価総額1位と2位を争う二大暗号資産ですが、その目的や技術的な仕組みには大きな違いがあります。イーサリアムの性質を正しく理解するためには、ビットコインとの違いを把握することが重要です。
両者の主な違いをまずは表でまとめました:
ビットコイン(BTC) | イーサリアム(ETH) | |
---|---|---|
創設年 | 2009年 | 2015年 |
目的 | デジタル通貨・価値保存 | スマートコントラクトプラットフォーム |
コンセンサスアルゴリズム | プルーフ・オブ・ワーク(PoW) | プルーフ・オブ・ステーク(PoS) |
半減期 | 約4年ごとに半減 | なし |
総発行枚数 | 2100万BTC(上限あり) | 無制限(発行上限なし) |
ブロック生成時間 | 約10分 | 約12~14秒 |
プログラム言語 | Script | Solidity、Vyper等 |
この表からも分かるように、両者は根本的な違いを持っています。これからそれぞれの違いについて詳しく見ていきましょう。
目的と機能の違い
ビットコインとイーサリアムの最も根本的な違いは、その目的と基本機能にあります。
ビットコインは主にデジタル通貨として設計されました。その主な目的は、中央集権的な金融機関を介さずに、ピアツーピア(P2P)で価値を移転することです。つまり、「デジタルゴールド」や「価値の保存手段」として機能することが主な役割です。ビットコインのブロックチェーン上でできることは、基本的にはビットコインの送金と受け取りに限られています。
ビットコインのプロトコルは複雑なデータ構造やアプリケーションをサポートするように設計されておらず、スマートコントラクト機能が限定的であるため、NFTやDAppsを扱うのはとても困難です。あくまで「価値の移転」を主眼に置いたシンプルな設計になっています。
一方、イーサリアムは最初からスマートコントラクトプラットフォームとして開発されました。イーサリアムは単なる通貨機能を超え、分散型アプリケーション(DApps)の開発や実行を可能にします。イーサリアムのブロックチェーン上では、様々なプログラムやアプリケーションを実行できるため、「世界のコンピューター」とも呼ばれています。
イーサリアムの特徴的な機能としてERC-20やERC-721などのトークン規格があり、これらによりデジタルアセットの作成や管理が容易になりました。プレセールを行っている仮想通貨の多くもこのイーサリアムのトークン規格を利用しています。
目的の違い
- ビットコイン:「価値の移転」に特化したデジタル通貨
- イーサリアム:スマートコントラクトを実行できる分散型プラットフォーム
この根本的な目的の違いが、両者の技術的な設計や将来の発展方向にも大きな影響を与えています。
コンセンサスアルゴリズムの違い
ビットコインとイーサリアムは、取引の承認方法(コンセンサスアルゴリズム)も異なります。
ビットコインは創設以来、プルーフ・オブ・ワーク(PoW)というコンセンサスアルゴリズムを採用しています。このシステムでは、マイナー(採掘者)と呼ばれる参加者が複雑な数学的パズルを解くために計算能力を競い合い、最初に解いた人がブロックを生成する権利を得ます。PoWは高いセキュリティを提供しますが、莫大なエネルギー消費が課題となっています。
一方、イーサリアムは当初PoWを採用していましたが、2022年9月に「The Merge」と呼ばれる大規模アップグレードにより、プルーフ・オブ・ステーク(PoS)へ移行しました。PoSシステムでは、トランザクションの検証者がETHをステーキング(担保として預け入れる)することで、ネットワークの安全性を維持します。
PoSへの移行により、イーサリアムのエネルギー消費は大幅に削減(約99.95%減)されました。これは環境への配慮だけでなく、イーサリアムの持続可能性と拡張性を高めるための重要なステップでした。
コンセンサスアルゴリズムの違いは、ネットワークのセキュリティモデル、エネルギー効率、分散化の度合い、そして将来の拡張性に大きな影響を与えています。PoSへの移行は、イーサリアムが環境に配慮しつつ、より効率的なブロックチェーンを目指していることを示しています。
発行枚数と半減期の違い
ビットコインとイーサリアムの大きな違いの一つとして、発行枚数の上限や半減期の有無も重要な要素です。
ビットコインは発行上限が2,100万BTCと厳密に定められ、約4年に一度のペースでマイニング報酬が半分になる「半減期」が実装されています。この仕組みにより、ビットコインはデフレ傾向の通貨となり、希少性が高まる設計になっています。
ビットコインの発行上限や半減期は創設者のサトシ・ナカモトによって決められました。これらの設定によりビットコインは希少性を保ち、インフレリスクを回避しています。2024年10月現在、ビットコインの発行済み枚数は約1900万BTCで、全体の90%以上が既に流通しています。残りのビットコインは2140年頃までに徐々に発行される予定です。
一方、イーサリアムは発行上限も半減期も設けていません。これは無制限に発行されるということではなく、プラットフォームの持続的な運用と安全性を確保するための設計上の選択です。
イーサリアムは2022年9月にPoS方式へ移行したことにより、新規発行量は大幅に削減されています。さらに、EIP-1559というアップデートにより、取引手数料の一部を「バーン(焼却)」する仕組みも導入されました。これにより流通量を調整しインフレを抑制する効果が期待されています。
実際にイーサリアムネットワークの利用が活発な期間には、バーンされる量が新規発行量を上回り、デフレ傾向になることもあります。つまり、イーサリアムは発行上限を設けない代わりに、動的な供給調整機能を持つように設計されているのです。
ビットコイン(BTC) | イーサリアム(ETH) |
---|---|
発行上限:2100万BTC | 発行上限:なし |
半減期:約4年ごと | 半減期:なし |
供給調整:半減期による減少 | 供給調整:バーン(焼却)による調整 |
傾向:デフレ型 | 傾向:状況に応じて変動 |
このような発行方針の違いは、両暗号資産の経済モデルや長期的な価値提案に大きな影響を与えています。ビットコインが「デジタルゴールド」としての希少性を重視しているのに対し、イーサリアムはプラットフォームの利用価値と持続可能性のバランスを取る設計になっているのです。
スケーラビリティの違い
スケーラビリティ(拡張性)についても、ビットコインとイーサリアムは異なるアプローチを取っています。
ビットコインはセキュリティと分散性を最優先に設計されており、その基本構造はシンプルで頑健です。しかし、その代償として処理能力には制限があり、1秒あたり約7トランザクション程度の処理能力しかありません。これがビットコインのスケーラビリティ問題につながっています。
ビットコインのスケーラビリティを向上させるため、「ライトニングネットワーク」などのレイヤー2ソリューションが開発されていますが、基本的な構造は比較的シンプルで、大規模な機能拡張は難しいとされています。ビットコインコミュニティは、セキュリティと分散性を犠牲にしてまでスケーラビリティを追求することには慎重な姿勢をとっています。
一方、イーサリアムはより柔軟な設計思想を持ち、継続的な進化を前提としています。イーサリアムは「シャーディング」や「ロールアップ」などの技術を用いてスケーラビリティの向上を目指しています。特にPoSへの移行後は、さらなるスケーリングソリューションの実装が進められています。
イーサリアムのスケーリングソリューション
- シャーディング:ブロックチェーンを複数の「シャード」に分割し、並列処理を可能にする技術
- レイヤー2ソリューション:メインチェーン外で取引を処理し、最終的な結果だけをメインチェーンに記録
- ロールアップ:複数の取引をまとめて一つの取引として処理する技術
- ステートチャネル:特定の参加者間で一連の取引をオフチェーンで実行し、最終結果のみをブロックチェーンに記録
これらの技術により、イーサリアムは将来的に1秒あたり数千から数万のトランザクションを処理することを目指しています。ただし、この拡張性の追求は、分散性やセキュリティとのトレードオフを伴う可能性があり、いわゆる「ブロックチェーントリレンマ」(セキュリティ、分散性、スケーラビリティの3つを同時に最適化することの難しさ)への対応が課題となっています。
イーサリアムの柔軟な構造は、継続的な進化と新機能の追加を可能にしており、これがイーサリアムのエコシステムが急速に成長している理由の一つです。今後も技術的な進化を続けることで、より多くのユースケースに対応できるプラットフォームを目指しています。
このようにビットコインとイーサリアムは、目的、機能、技術的な仕組みなど、多くの点で異なる特徴を持っています。どちらが優れているというわけではなく、それぞれが異なる目的と価値提案を持ち、暗号資産エコシステムの中で共存しているのです。イーサリアムを理解する上で、こうしたビットコインとの違いを把握することは非常に重要です。

イーサリアム(ETH)の歴史と価格推移
イーサリアムは2015年7月に一般公開され、その後急速な発展を遂げました。暗号資産市場の動向や技術的な進化、規制環境の変化など、様々な要因によってその価格は大きく変動してきました。ここでは、イーサリアムの主要な出来事と価格推移を時系列で解説します。
時期 | 主要な出来事 | 1ETHの価格(円換算) |
---|---|---|
2015年 | 一般公開 | 1ETH = 500円以下 |
2016年 | 「ホームステッド」アップデート、The DAO事件 | 1ETH = 1,000円以上 |
2017年 | 「ビザンチウム」アップデート、ICOブーム | 年末に1ETH = 16万円台 |
2018年 | 仮想通貨バブル崩壊 | 年末に1ETH = 1万円台 |
2019年 | 「コンスタンティノープル」アップデート | 1ETH = 1〜3万円台 |
2020年 | DeFiブーム、ETH2.0ステーキング開始 | 1ETH = 1〜10万円台 |
2021年 | NFTブーム、過去最高値を更新 | 1ETH = 10〜50万円超え |
2022年 | 「The Merge」実施(PoS移行) | 1ETH = 15〜40万円 |
2023年 | 「Shanghai」アップデート(ステーキング引き出し有効化) | 1ETH = 20〜30万円 |
2024年 | イーサリアムETF承認 | 1ETH = 30〜60万円台 |
2015年〜2017年:誕生と初期の成長
2015年7月にイーサリアムが一般公開された当初、価格は1ETH=500円以下で推移していました。投資家やデベロッパーの間ではスマートコントラクトの可能性に注目が集まっていましたが、一般認知度はまだ低く、価格も安定していました。
2016年3月には「ホームステッド」アップデートが実施されました。これはイーサリアムの最初の主要アップデートで、ネットワークの安定性と機能性を向上させ、スマートコントラクトの改善、取引速度の向上、新機能の追加などが行われました。このアップデートにより、イーサリアムは本格的な稼働段階に入り、価格も1ETH=1,000円を突破する契機となりました。
しかし2016年6月には、当時最大のクラウドファンディングプロジェクトであった「The DAO」がハッキング被害を受け、約360万ETH(当時のレートで約5,000万ドル相当)が盗まれるという事件が発生。この対応を巡りイーサリアムコミュニティは分裂し、ハードフォークによってイーサリアム(ETH)とイーサリアムクラシック(ETC)に分かれることになりました。
2017年は仮想通貨市場全体が活況を呈し、イーサリアム価格も大きく上昇しました。特に「ビザンチウム」アップデートが2017年10月16日に実施され、セキュリティの強化、スマートコントラクトの効率化、プライバシーの向上が図られました。また、この年はICO(Initial Coin Offering)ブームも始まり、多くのプロジェクトがイーサリアムのブロックチェーン上でトークンを発行したことで需要が増大。年末には1ETH=16万円台まで価格が急騰しました。
2018年〜2020年:バブル崩壊と回復
2018年初頭、仮想通貨市場全体が調整局面に入り、バブルが崩壊。イーサリアムの価格も急落し、年末には1ETH=1万円台まで下落する厳しい相場が続きました。
この下落の背景には、ICOブームの終焉が大きく影響しています。2017年には875件のICOが行われ62億ドル以上の資金を調達しましたが、2018年にはICOへの関心が急速に低下。多くのICOプロジェクトが資金調達後にイーサリアムを売却したことも、価格下落の一因となりました。
さらに、多くのDAppsは期待されたほど使用率が上がらず、イーサリアムネットワークの実用性に疑問が投げかけられました。同時に、規制当局の監視強化やセキュリティ懸念なども市場心理に影響を与えました。
2019年2月には「コンスタンティノープル」アップデートが行われました。このアップデートではマイニング報酬の削減やスマートコントラクトの効率化など、5つの改善提案(EIP)を導入。これはイーサリアム2.0への移行に向けた準備段階として位置付けられました。その後、価格は徐々に回復し始めます。
2020年は新型コロナウイルスの世界的流行により、3月には一時的な大暴落を経験したものの、その後はDeFi(分散型金融)ブームの始まりとともに市場は回復傾向に。DeFiプロジェクトの多くがイーサリアム上に構築されたことで、イーサリアムの価値が再認識され、価格は上昇トレンドに入りました。
また2020年12月には、イーサリアム2.0の第一段階である「ビーコンチェーン」が稼働を開始。これによりETHのステーキングが可能となり、将来のPoS移行への道筋が示されました。
2021年〜2022年:最高値更新とThe Merge
2021年はイーサリアムにとって飛躍の年となりました。NFT(非代替性トークン)市場の爆発的な成長とDeFiセクターの継続的な発展により、イーサリアムの需要は急増。5月には一時1ETH=50万円を超え、過去最高値を更新しました。
また、8月にはEIP-1559を含む「ロンドン」ハードフォークが実施され、ガス代(取引手数料)の一部を「バーン」(焼却)する仕組みが導入されました。これにより、イーサリアムの発行率が低下し、場合によってはデフレ傾向になる可能性も生まれました。
2022年前半は市場全体の調整やテラ/ルナの崩壊、インフレや金利上昇などマクロ経済的要因により、イーサリアム価格は下落傾向を示しました。しかし、9月15日には「The Merge(ザ・マージ)」と呼ばれる歴史的なアップグレードが無事に完了。これにより、イーサリアムは従来のプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)へとコンセンサスアルゴリズムを移行しました。
The Mergeの主な特徴は以下の通りです
The Mergeの主な特徴
- PoWからPoSへ移行:イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムが大きく変更され、エネルギー消費が99.95%削減
- チェーンの統合:旧システム(メインネット)と新システム(ビーコンチェーン)が統合され、新しいイーサリアムネットワークが誕生
- ステーキングの本格導入:参加者がETHを預けてネットワーク維持に貢献し見返りを受け取る仕組みが本格化
- スケーラビリティ向上への基盤:シャーディングなど、今後の大規模なアップグレードへの道筋が整う
The Mergeは技術的に成功を収めたものの、「噂で買い、事実で売る」という相場格言通り、実際にアップグレードが完了した後は価格下落が見られました。また、11月にはFTX取引所の破綻など、暗号資産市場全体に影響を与える出来事も発生し、イーサリアムも値を下げました。
2023年〜2024年:安定と将来への期待
2023年に入ってからは、暗号資産市場全体が徐々に回復し、イーサリアムの価格も安定化してきました。4月12日には「上海」アップグレード(別名:Shapella)が実施され、それまでロックされていたステーキングETHの引き出しが可能になりました。
多くの専門家は、上海アップグレードにより大量の引き出しとその後の売りが起きることを懸念していましたが、実際には大規模な影響はなく、むしろステーキング参加者にとってのリスクが軽減され、長期的にはイーサリアムエコシステムの健全な成長に寄与すると評価されました。
2023年後半から2024年にかけては、マクロ経済環境の改善や機関投資家の関心増大により、暗号資産市場全体が回復基調となりました。特に2024年5月23日には、米証券取引委員会(SEC)がイーサリアムの現物ETF(上場投資信託)の上場を承認。これにより、より多くの機関投資家や個人投資家がイーサリアムへ投資しやすい環境が整いました。
ETF承認の影響もあり、イーサリアムの価格は再び上昇し、2024年半ばには60万円台を記録するなど、堅調な値動きを見せています。
ヴィタリック・ブテリンにより考案され、2015年7月30日にイーサリアムが正式リリース。スマートコントラクト機能を持つブロックチェーンとして画期的なプラットフォームが誕生した。
ICOブームとともに急上昇し、2018年1月に当時の最高値を記録。その後、市場全体の調整とともに価格は大幅に下落した。
DeFiとNFTの爆発的成長により、イーサリアムの価値が再評価され、2021年に過去最高値を更新した。
PoSへの移行を完了し、ETF承認により機関投資家からの注目が高まる。技術的進化と市場成熟が進み、主要暗号資産としての地位を確立した。
イーサリアムは創設から9年余りの間に、数々の技術的挑戦や市場の浮き沈みを経験しながらも、着実に成長を遂げてきました。特にThe Mergeの成功とETF承認は、イーサリアムの成熟度と将来性を示す重要なマイルストーンとなりました。
現在のイーサリアムは、単なる投機対象ではなく、NFT、DeFi、メタバースなど様々なアプリケーションの基盤として機能しており、ブロックチェーン技術の中心的存在として確固たる地位を築いています。また、継続的な技術開発によって、将来的にはさらなるユースケースの拡大が期待されています。

イーサリアム(ETH)の課題とアップデート
イーサリアムは革新的な技術と幅広い応用可能性を持つプラットフォームですが、急速な成長とともに様々な課題も浮き彫りになってきました。ここでは、イーサリアムが直面している主要な課題と、それらを解決するために実施されてきた、またこれから計画されているアップデートについて解説します。
イーサリアムの主な課題
- スケーラビリティ問題(処理速度と容量の制限)
- ガス代(手数料)の高騰
- スマートコントラクトのセキュリティリスク
- 環境への影響(旧PoWシステム時)
- 開発の複雑さと技術的な障壁
スケーラビリティ問題
スケーラビリティ問題とは、ネットワークの処理能力に限界があるため、利用者が増えると取引の承認時間が長くなったり、手数料(ガス代)が高騰したりする問題のことです。イーサリアムのメインネットは、理論上1秒間に約15〜30トランザクションしか処理できず、これが大きなボトルネックとなっています。
イーサリアムの人気が高まるにつれて、取引量が増加し、ネットワークが混雑する状況が頻繁に発生するようになりました。特にDeFiやNFTが急成長した2020年後半から2021年にかけて、この問題は顕著になりました。
スケーラビリティ問題の主な影響と課題は以下の通りです
- 取引の遅延:混雑時には取引の承認に数分から数時間かかることも
- 高いガス代:混雑時には手数料が急騰し、小額取引が事実上不可能に
- ユーザー体験の低下:遅延や高コストにより、一般ユーザーの利用障壁が高くなる
- DAppsの制約:高トランザクション処理が必要なアプリケーションの開発が難しい
- 競合ブロックチェーンへの流出:Solana、Avalanche、Binance Smart Chainなどの高速処理が可能な代替チェーンへのユーザー流出
イーサリアムのスケーラビリティ問題を解決するために、主に2つのアプローチが取られています
- レイヤー1(L1)のスケーリング:イーサリアムのメインチェーン自体の処理能力を向上させる取り組み
- レイヤー2(L2)のスケーリング:メインチェーンの上に構築された第2層のソリューションによる処理効率の向上
レイヤー1のスケーリングとしては、コンセンサスアルゴリズムのPoSへの移行や将来的なシャーディング(ブロックチェーンを小さな部分に分割して並列処理を可能にする技術)の導入が挙げられます。
一方、レイヤー2ソリューションとしては、Optimistic Rollups(Optimism、Arbitrumなど)やZK-Rollups(zkSync、StarkNetなど)といった技術が開発され、すでに実用化されています。これらは、多数のトランザクションをバッチ処理してからメインチェーンに記録することで、処理能力を大幅に向上させています。
ガス代(手数料)の高騰
ガス代とは、イーサリアムネットワーク上で取引や操作を行う際に支払う手数料のことです。ガス代はETHで支払われ、ネットワークの処理負荷や混雑状況に応じて変動します。イーサリアムのスマートコントラクト実行やトークン送金など、あらゆる操作にはガス代が必要です。
特にネットワークが混雑している時期には、ガス代が高騰し、一時は単純なトークン送金で数千円、DEXでのトークン交換で1万円以上、NFTのミントでは数万円のガス代がかかることもありました。これは特に小額取引や頻繁な取引を行うユーザーにとって大きな障壁となっています。
ガス代の高騰は以下のような影響をもたらしました:
ガス代高騰の影響
- 少額取引の非現実性:手数料が取引額を上回るケースが発生
- 一般ユーザーの参入障壁:高コストにより新規ユーザーが敬遠
- DeFiサービスの利用制限:頻繁な取引が必要なDeFiが実質的に富裕層向けに
- 競合チェーンへの移行:低コストのソラナやアバランチなどへのユーザー流出
- 開発者の離反:高コストにより実験的なプロジェクトが困難に
この問題に対処するため、イーサリアムは2021年8月の「ロンドン」ハードフォークでEIP-1559を導入しました。これにより、ガス代の計算方法が変更され、以下のような改善が図られました:
- 基本料金(Base Fee)と優先料金(Priority Fee)の分離:より予測可能な料金体系へ
- 基本料金の自動調整:ブロック使用率に応じて料金が上下する仕組み
- 基本料金のバーン(焼却):支払われた基本料金はETHの総供給量から除外され、インフレを抑制
EIP-1559の導入により、ガス代の予測可能性は向上しましたが、混雑時の高騰という根本的な問題は解決されていません。この問題の本質的な解決には、スケーラビリティの向上が不可欠です。
現在、多くのユーザーはレイヤー2ソリューションを利用することで、ガス代を大幅に削減しています。例えば、ArbitrumやzkSyncなどのL2では、メインネットの10分の1以下のガス代で取引が可能になっています。また、将来的なシャーディングの実装により、さらなるガス代の削減が期待されています。
ガス代とは?
ガスとは、イーサリアムネットワーク上で処理を実行するために必要な計算作業の単位です。単純なETH送金には少ないガスで済みますが、複雑なスマートコントラクトの実行には多くのガスが必要になります。ガス代は「ガス量 × ガス価格」で計算され、ETHで支払われます。ガス価格はネットワークの混雑状況に応じて変動するため、混雑時には高騰します。ガス代はネットワークを保護し、スパム攻撃を防止する役割も果たしています。
大型アップデート「The Merge」と今後の計画
イーサリアムは、様々な課題を解決し、より効率的で拡張性の高いプラットフォームへと進化するため、継続的なアップデートを行っています。特に、2022年9月に実施された「The Merge(ザ・マージ)」は、イーサリアムの歴史における最も重要なアップデートの一つでした。
The Mergeは、イーサリアムのコンセンサスアルゴリズムをプルーフ・オブ・ワーク(PoW)からプルーフ・オブ・ステーク(PoS)に移行させたアップデートです。この移行により、以下のような大きな変化がもたらされました:
- エネルギー消費の大幅削減:約99.95%のエネルギー消費削減を実現
- ステーキングによる参加:マイニング機器を持たなくても、ETHを保有することで検証者として参加可能に
- セキュリティの向上:51%攻撃のコストが大幅に上昇
- 発行量の削減:新規ETH発行量が約90%減少
- 将来のアップグレードへの基盤:シャーディングなど、将来の拡張性向上のための基盤作り
The Mergeはイーサリアムの課題解決に向けた重要なステップではありましたが、これはあくまで長期的なロードマップの一部です。イーサリアムはThe Merge以降も、さらなるアップグレードを計画しています。
イーサリアムの創設者、ヴィタリック・ブテリンが提唱する今後のアップグレードロードマップは以下の通りです
PoWからPoSへの移行を2022年9月に完了。エネルギー効率と将来の拡張性向上の基盤を築いた。
シャーディングとロールアップ技術を活用した拡張性向上。1秒あたり数千トランザクションの処理を目指す。
MEV(マイナー抽出可能価値)の問題解決と、より分散化されたプロトコルの実現を目指す。
検証の簡素化を図り、ネットワーク参加のハードルを下げ、さらなる分散化を推進する。
技術的負債の解消とストレージコストの最適化を図る。
その他のアップグレードや最適化を行い、イーサリアムエコシステムの完成度を高める。
特に注目されているのは「The Surge」フェーズで計画されているシャーディングの実装です。シャーディングとは、ブロックチェーンを複数の「シャード」と呼ばれる部分に分割し、並列処理することでスケーラビリティを向上させる技術です。これが実装されれば、現在のスケーラビリティ問題とガス代の高騰が大幅に緩和されると期待されています。
また、2023年4月には「上海/カペラ」アップグレードが実施され、ステーキングしたETHの引き出しが可能になるなど、継続的な改善が進められています。
こうした段階的なアップグレードによって、イーサリアムは「世界のコンピューター」としての可能性を最大限に引き出すことを目指しています。しかし、これらのアップグレードには技術的な複雑さを伴い、実装には時間がかかる可能性もあります。また、アップグレードの進行とともに、ガバナンスやセキュリティに関する新たな課題も生じる可能性があります。
イーサリアムの課題は依然として存在していますが、コミュニティと開発チームによる継続的な努力によって、一つずつ解決に向かっています。将来的には、より高速で低コスト、そして環境に優しいプラットフォームとして、暗号資産やブロックチェーン技術の普及に大きく貢献することが期待されています。

イーサリアム(ETH)の将来性と今後の見通し
イーサリアムは現在、ビットコインに次ぐ時価総額を誇る暗号資産として確固たる地位を築いていますが、その将来性はどのように評価されているのでしょうか。ここでは、イーサリアムの将来性と今後の見通しについて、技術革新、市場環境、機関投資家の動きなど、様々な側面から分析します。
イーサリアムの今後を評価する上では、以下の3つの視点が特に重要となります
イーサリアムの将来性を評価する主要な視点
- 技術革新と成長の可能性
- DeFiとNFT市場におけるイーサリアムの優位性
- 機関投資家の参入とETF承認の影響
イーサリアムの技術革新と成長の可能性
イーサリアムは設立以来、継続的な技術革新を行ってきました。そして、現在も将来を見据えた様々なアップグレード計画が進行中です。これらの技術革新がイーサリアムの将来性に大きな影響を与えると考えられています。
イーサリアムの技術革新に関する主要なロードマップは以下の通りです
- シャーディング:ブロックチェーンを複数のシャードに分割し、並列処理を可能にすることで、スケーラビリティを大幅に向上させる技術
- プロトコル・ダンクシャーディング(EIP-4844):レイヤー2のロールアップのデータ可用性を向上させ、手数料を削減するアップグレード
- シングルスロットファイナリティ(SSF):トランザクションの確定速度を高速化し、より効率的で安全な取引を実現
- プロポーザー・ビルダー分離(PBS):ブロック生成プロセスを分離し、MEV(Miner/Maximal Extractable Value)の問題を軽減
- アカウントアブストラクション:ウォレットの使いやすさを向上させ、鍵管理のリスクを軽減する仕組み
- バークルツリー:ネットワークの運用コストを削減し、ノード運営のハードルを下げる技術
これらの技術革新が実現すれば、イーサリアムはより高速で低コスト、そして使いやすいプラットフォームとなり、一般ユーザーやデベロッパーにとっての参入障壁が大幅に低下すると期待されています。特に「シャーディング」の実装は、現在のイーサリアムの最大の課題であるスケーラビリティ問題を大きく改善する可能性があります。
現在のPoSシステムへの移行が成功したことで、イーサリアム開発チームの技術力への信頼は高まっており、今後のアップグレードに対する期待も大きくなっています。ただし、これらの技術革新の実装には時間がかかる可能性もあり、開発の遅延リスクも考慮する必要があります。
また、技術革新だけでなく、イーサリアムの開発者エコシステムの拡大も重要なポイントです。イーサリアムは現在、最も多くの開発者が参加しているブロックチェーンプラットフォームであり、この強力な開発者コミュニティがイーサリアムの継続的な進化と革新を支えています。
DeFiとNFT市場におけるイーサリアムの優位性
イーサリアムの将来性を評価する上で重要な要素の一つが、DeFi(分散型金融)とNFT(非代替性トークン)市場における現在の優位性です。これらの新興分野でイーサリアムがどのような位置を占めているのか、そして今後どのように発展していく可能性があるのかを見ていきましょう。
DeFi市場においては、イーサリアムが圧倒的なシェアを持っています。総額で見ると、全DeFiプロジェクトのTVL(Total Value Locked:ロックされた総資産価値)の約60〜70%がイーサリアム上に構築されているプロジェクトで占められています。主要なDeFiプロトコルとしては、Aave、Compound、Uniswap、MakerDAOなどが挙げられ、これらはすべてイーサリアムをベースに開発されています。
DeFi市場におけるイーサリアムの優位性の源泉は以下の点にあります
DeFi市場でのイーサリアムの強み
- 成熟したスマートコントラクト環境と開発ツール
- 最大の開発者コミュニティと豊富な人材
- 高いセキュリティと信頼性の実績
- プロジェクト間の相互運用性とコンポーザビリティ
- 資金調達の容易さと投資家ネットワーク
一方、NFT市場においても、イーサリアムは主導的な地位を占めています。OpenSeaやRaribleなどの主要NFTマーケットプレイスはイーサリアム上で構築されており、Bored Ape Yacht Club、CryptoPunks、Art Blocksなどの人気NFTコレクションもイーサリアムのERC-721やERC-1155規格を採用しています。
NFT市場におけるイーサリアムの利点としては、以下が挙げられます
- ERC-721、ERC-1155などの確立された規格
- 大規模なマーケットプレイスと流動性
- 信頼性の高いインフラストラクチャ
- 幅広いウォレットやツールのサポート
これらの優位性にもかかわらず、イーサリアムはスケーラビリティの制限とガス代の高さから、一部のユーザーやプロジェクトを他のブロックチェーンに奪われています。ソラナ、アバランチ、BNBチェーンなどのプラットフォームは、低コストと高速処理をアピールポイントに市場シェアを拡大しています。
しかし、イーサリアムのレイヤー2ソリューション(Arbitrum、Optimism、zkSyncなど)の発展により、これらの課題は徐々に解消されつつあります。レイヤー2上ではガス代が大幅に削減され、処理速度も向上するため、イーサリアムの利点を維持しながら、競合プラットフォームに対抗できるようになっています。
今後のDeFiとNFT市場の発展に伴い、イーサリアムがその優位性を維持できるかどうかは、スケーラビリティの向上、ユーザー体験の改善、そして競合プラットフォームとの差別化にかかっていると言えるでしょう。
機関投資家の参入とETF承認の影響
イーサリアムの将来性を考える上で、近年特に注目されているのが機関投資家の参入とETF(上場投資信託)の承認です。これらの動きは、イーサリアムの価格だけでなく、暗号資産市場全体の成熟度と正当性に大きな影響を与える可能性があります。
2024年5月、米国証券取引委員会(SEC)は、イーサリアムの現物ETFを承認しました。この決定は、イーサリアムが規制当局から「証券」ではなく「コモディティ(商品)」として認識されたことを意味し、機関投資家がイーサリアムに投資する道を大きく開きました。
イーサリアムETFの承認がもたらす主な影響としては、以下のような点が挙げられます
- 機関投資家の参入障壁の低下:ETFを通じて、直接暗号資産を保有することなくイーサリアムに投資できるようになった
- 流動性の向上:機関資金の流入により、イーサリアム市場の流動性が高まる
- 価格の安定性:大口投資家の参入により、長期的には価格の安定性が高まる可能性
- 認知度と信頼性の向上:伝統的な金融システムからの認知が高まり、一般投資家の信頼を獲得
- 規制環境の明確化:ETF承認により、イーサリアムの規制上の位置付けが明確になり、不確実性が減少
ビットコインETFが承認された際には、価格が大きく上昇しました。イーサリアムETFについても同様の効果が期待されていますが、実際の影響は中長期的に評価される必要があります。短期的な価格変動よりも重要なのは、イーサリアムが伝統的な金融システムに組み込まれ、より幅広い投資家層にアクセス可能になったという事実です。
また、ETF承認以外にも、機関投資家のイーサリアムへの関心は高まっています。例えば、グレースケール、3iQ、21シェアーズなどの資産運用会社は、イーサリアム関連の投資商品を提供しています。さらに、JPモルガン、モルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックスなどの大手金融機関も、顧客向けの暗号資産投資サービスを拡充しています。
一方で、規制環境の変化も機関投資家の参入に影響を与える重要な要素です。米国やEU、日本などの主要国・地域では、暗号資産に関する規制の枠組みが徐々に整備されつつあります。明確な規制の確立は、機関投資家が安心して参入するための重要な条件となります。
ただし、ETFの承認や機関投資家の参入がすべてポジティブな影響をもたらすとは限りません。機関投資家の大規模な資金移動は、市場のボラティリティを高める可能性もあります。また、イーサリアムの保有が集中化することで、分散化というブロックチェーンの理念が損なわれる懸念もあります。
総合的に見ると、機関投資家の参入とETF承認は、イーサリアムの将来性にとってポジティブな要素と言えるでしょう。これらの動きは、イーサリアムが成熟した資産クラスとして認知されつつあることを示し、長期的な成長の基盤となる可能性があります。
イーサリアムの将来性に関する要素 | 見通し |
---|---|
技術革新(シャーディング、L2など) | 積極的。開発は順調に進行中だが、実装には時間がかかる可能性あり |
DeFi市場におけるポジション | 強固。競合の台頭はあるが、エコシステムの深さで優位性を維持 |
NFT市場におけるポジション | 支配的。ERC規格が業界標準として確立 |
機関投資家の参入 | 加速中。ETF承認により伝統的投資家からの資金流入が期待される |
規制環境 | 改善傾向。主要国でのフレームワーク整備が進む |
競合プラットフォームとの競争 | 激化。低コスト・高速処理を武器に複数の競合が台頭 |
イーサリアムの将来性は、技術革新の成功、市場シェアの維持、規制環境の発展など、多くの要因に左右されます。しかし、現時点では、強力な開発者コミュニティ、確立されたエコシステム、機関投資家からの関心の高まりなど、ポジティブな要素が多く見られます。
もちろん、テクノロジーの急速な進化や規制の変化、競合プラットフォームの台頭など、不確実性も存在します。しかし、イーサリアムがこれまで示してきた適応力と革新性を考慮すると、長期的な成長のポテンシャルは高いと評価できるでしょう。

イーサリアム(ETH)の買い方・購入方法
イーサリアムの将来性や技術的な優位性について理解したところで、実際にイーサリアムを購入する方法について解説します。初心者の方でも安全かつ簡単にイーサリアムを購入できるよう、段階的に手順を紹介していきます。
イーサリアムを購入する際には、安全性と使いやすさを兼ね備えた取引所を選ぶことが重要です。日本では金融庁に登録された暗号資産交換業者で取引することが安全です。中でもコインチェックは、初心者にも使いやすく、日本国内で人気のある取引所の一つです。
コインチェックでイーサリアムを購入する手順
コインチェックでイーサリアムを購入するためには、以下のステップを順に進めていきます。初めての方でも約15分程度で口座開設から購入までを完了することができます。
口座開設のためには、本人確認書類の提出が必要です。氏名、住所、生年月日などの個人情報を入力し、運転免許証やパスポートなどの本人確認書類をアップロードします。書類は明るい場所で鮮明に撮影し、四隅が写るように注意しましょう。
セキュリティ強化のため、二段階認証の設定をおすすめします。「設定」→「二段階認証」から設定できます。スマートフォンに認証アプリ(Google AuthenticatorやMicrosoft Authenticatorなど)をインストールし、表示されるQRコードを読み取って設定を完了させます。
本人確認が完了したら、日本円を入金します。コインチェックでは、銀行振込、コンビニ入金、クイック入金(即時反映)などの方法が利用できます。「入出金」→「日本円の入金」から希望の入金方法を選択し、手順に従って入金を行います。初めての方は少額から始めることをおすすめします。
日本円の入金が確認できたら、イーサリアムを購入します。「取引所」もしくは「販売所」からイーサリアム(ETH)を選択し、購入したい金額または数量を入力して注文を確定します。取引所では他のユーザーと売買を行うため手数料が安いですが、販売所は初心者でも簡単に購入できる特徴があります。
上記の手順でイーサリアムの購入は完了です。購入したイーサリアムは、コインチェックのウォレット(口座)に自動的に保管されます。
取引所と販売所の違い
- 取引所:ユーザー同士が売買を行う場所。価格は需要と供給によって決まり、手数料が安いのが特徴。ただし注文が約定するまで待つ必要がある
- 販売所:取引所自体が売買の相手となるサービス。即時に取引が成立するが、取引所よりも価格が高めに設定されている場合が多い
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購入後のウォレット管理と注意点
イーサリアムを購入した後、安全に管理するためにはいくつかの注意点があります。特に大切なのが「ウォレット(財布)」の選択と管理です。
ウォレットには大きく分けて以下の種類があります
- 取引所ウォレット:コインチェックなどの取引所が提供するウォレット。便利だが取引所がハッキングされるリスクがある
- ホットウォレット:インターネットに接続されているウォレット(スマホやPCアプリなど)。使いやすいが、セキュリティリスクはある
- コールドウォレット:インターネットに接続されていない物理的なデバイス。最も安全だが、操作がやや複雑
少額の投資であれば取引所ウォレットでも問題ありませんが、まとまった金額を保管する場合は、セキュリティの高いコールドウォレットの利用を検討すべきです。人気のコールドウォレットとしては、Ledger NanoシリーズやTrezorなどがあります。
また、イーサリアムを取引所から外部ウォレットに送金する際は、以下の点に注意が必要です
送金時の注意点
- 送金先アドレスを必ず二重確認する(アドレスの間違いは取り返しがつかない)
- 少額で送金テストを行った後に本送金する
- イーサリアムを送金する際は、ガス代(手数料)が必要なことを理解する
- 混雑時は送金手数料が高騰するため、比較的空いている時間帯を選ぶ
- イーサリアムはイーサリアムのネットワーク(ETHチェーン)でのみ送金する
国内の取引所から海外の取引所にイーサリアムを送金したい場合は、以下の手順が一般的です
- コインチェックなどの国内取引所で口座を開設し、日本円を入金
- リップル(XRP)などの送金手数料が低い通貨を購入
- Bybitなどの海外取引所に口座を開設
- 国内取引所から海外取引所にリップルを送金
- 海外取引所でリップルを売却し、目的の仮想通貨を購入
イーサリアム投資におすすめの方法
イーサリアムへの投資方法はいくつかありますが、初心者や長期投資を考えている方には「つみたて投資(ドルコスト平均法)」がおすすめです。この方法は、市場のタイミングを見計らうことなく、定期的に一定金額ずつ投資を続けるシンプルな手法です。
つみたて投資の特徴は以下の通りです
- 相場の上下に関わらず、定期的に一定金額を投資
- 価格が高いときは少ない数量を、安いときは多い数量を自動的に購入
- 結果として、平均購入価格が市場平均より低くなる可能性が高い
- 感情に左右されず、長期的な投資が可能
- 少額から始められる(コインチェックつみたては月1万円から)
コインチェックでは「Coincheckつみたて」というサービスを提供しており、毎月自動的にイーサリアムを購入することができます。設定は簡単で、一度設定すれば後は自動的に購入が続きます。
イーサリアム投資を始める際の金額は、自分の経済状況や投資目的によって異なりますが、初心者の場合は少額(例えば月1万円程度)から始めることをお勧めします。慣れてきたら徐々に金額を増やしていくなど、段階的に投資を拡大していくとよいでしょう。
また、資産の分散という観点からも、イーサリアム一つに集中するのではなく、ビットコインなど他の暗号資産や、株式、債券など異なる資産クラスへの投資も検討するとリスクを軽減できます。
特に重要なのは、自分自身で情報収集と学習を継続することです。イーサリアムは技術的な進化を続けており、市場環境も刻々と変化しています。信頼できる情報源から最新情報を得ることで、より良い投資判断ができるようになります。
最後に、投資は長期的な視点で行うことが重要です。暗号資産市場は短期的には大きな価格変動がありますが、長期的なトレンドを捉えることで、より安定した投資リターンを期待できます。特に、急な値上がりや値下がりに一喜一憂せず、自分の投資計画に基づいて冷静に行動することが成功への近道です。

イーサリアム(ETH)に関するよくある質問
イーサリアムに関して、多くの人が持つ疑問や質問について回答します。初心者の方がよく抱く疑問から、少し踏み込んだ質問まで幅広くカバーしています。
イーサリアムの将来価格予想は?
イーサリアムの将来価格を正確に予測することは非常に困難です。価格は需要と供給、技術的発展、規制環境、市場心理など、様々な要因に影響されるためです。
様々なアナリストや専門家による2025年のイーサリアム価格予想は幅広く、5,000ドル(約75万円)から10,000ドル(約150万円)程度の範囲と予測する意見が多いようです。特に、シャーディングの実装やDeFi・NFT市場の成長、機関投資家の参入などがポジティブ要因として挙げられています。
ただし、これらの予測は不確実性が高く、あくまで参考程度に考えるべきです。暗号資産市場は非常にボラティリティが高いため、短期的な価格変動に一喜一憂するのではなく、長期的な視点で投資判断を行うことが重要です。
また、投資判断は価格予想だけでなく、イーサリアムの技術的価値や実用性、エコシステムの成長性などを総合的に評価して行うべきでしょう。
イーサリアムの何がすごいの?
イーサリアムの革新性と凄さは多岐にわたりますが、主に以下の点が特筆されます
- プログラム可能なブロックチェーン:イーサリアムは単なる送金システムではなく、あらゆる種類のプログラム(スマートコントラクト)を実行できるプラットフォームです。これにより、銀行、保険、不動産取引などの複雑な金融サービスから、ゲームやソーシャルメディアまで、様々なアプリケーションが構築可能になりました。
- 分散型アプリケーションの基盤:イーサリアムは中央管理者を必要としない分散型アプリケーション(DApps)の開発を可能にしました。これにより、検閲耐性があり、透明性の高いサービスが実現しています。
- スマートコントラクトの発明:自動実行される契約の仕組みにより、仲介者なしで複雑な取引や合意が可能になりました。これは金融や契約の概念を根本から変える革命的なアイデアです。
- DeFiとNFTの実現:イーサリアムはDeFi(分散型金融)とNFT(非代替性トークン)という、従来の金融やデジタル所有権の概念を変革する新たな領域を切り開きました。
- コミュニティ駆動の発展:イーサリアムは世界中の開発者コミュニティによって進化を続けており、オープンソースの特性を活かした持続的なイノベーションが行われています。
これらの革新性により、イーサリアムは「Web3.0」と呼ばれる次世代インターネットの中核技術として、デジタル経済の未来を形作る重要な役割を担っていると評価されています。
イーサリアムの欠点とリスクは?
イーサリアムには様々な可能性がある一方で、いくつかの欠点やリスクも存在します
- スケーラビリティの制約:現状のイーサリアムメインネットは処理能力に限界があり、混雑時にはトランザクションの遅延やガス代(手数料)の高騰が発生します。
- 高いガス代:ネットワークの混雑時には手数料が非常に高くなることがあり、少額取引が非現実的になる場合があります。
- 技術的な複雑さ:スマートコントラクトの開発やDAppsの利用には技術的な知識が必要で、一般ユーザーにとって障壁となることがあります。
- スマートコントラクトのセキュリティリスク:プログラムのバグや脆弱性により、資金流出などの問題が発生する可能性があります。過去には「The DAO事件」など大規模なハッキング事件も発生しています。
- 規制リスク:各国の規制当局による暗号資産やDeFiに対する規制強化により、イーサリアムエコシステムに影響が及ぶ可能性があります。
- 競合プラットフォームの台頭:ソラナ、アバランチ、ポリゴンなど、より高速で低コストなブロックチェーンプラットフォームの台頭により、市場シェアを奪われるリスクがあります。
- 発行上限がない:ビットコインのような発行上限がないため、長期的なインフレリスクを懸念する声もあります(ただし、EIP-1559によるバーン機能により一定の調整は行われています)。
これらの課題に対しては、シャーディング、レイヤー2ソリューション、ガバナンスの改善など、様々な取り組みが進行中です。投資家や利用者は、これらのリスクを理解した上で、自身の判断で関わっていくことが重要です。
イーサリアムとビットコインはどちらに投資すべき?
イーサリアムとビットコインは異なる特性と用途を持っており、どちらが優れているというわけではありません。ビットコインは「デジタルゴールド」として価値保存の役割を、イーサリアムは「プログラム可能なお金」として革新的なアプリケーション基盤の役割を果たしています。
理想的には、リスク分散の観点から両方に投資することが推奨されます。ビットコインはより確立された存在で、相対的にボラティリティが低い傾向があります。一方、イーサリアムはより高い成長ポテンシャルを持つ反面、リスクも大きいと言えます。自分のリスク許容度や投資目的に応じて、適切な配分を検討するとよいでしょう。
イーサリアムはどのくらいの量を持つべき?
イーサリアムの保有量は、個人の経済状況、リスク許容度、投資目的によって大きく異なります。一般的な原則として、「損失しても生活に支障のない金額」以内に抑えることが重要です。
ポートフォリオ全体における暗号資産の割合としては、リスク許容度が高い投資家でも資産の5~10%程度、保守的な投資家であれば1~5%程度が目安とされることが多いです。また、暗号資産内でもビットコイン、イーサリアム、その他のアルトコインなど、複数の通貨に分散投資することがリスク管理の観点から推奨されています。
初心者の場合は、少額から始めて徐々に知識と経験を積みながら投資額を増やしていくアプローチが賢明です。
イーサリアムを長期保有すべき?
イーサリアムの長期保有(いわゆる「ガチホ」)は、多くの投資家や専門家によって推奨されている戦略です。イーサリアムは短期的には大きな価格変動がありますが、長期的な視点で見ると技術的な進化と採用の拡大により成長が期待される資産です。
特に、イーサリアムの基盤技術としての価値を理解し、Web3.0やDeFi、NFTなどの発展に期待する長期的な視点を持った投資家には適した戦略と言えるでしょう。ただし、暗号資産市場はまだ発展途上であり、規制環境の変化や競合技術の登場など、様々なリスク要因もあります。
長期保有と併せて、「ドルコスト平均法」で定期的に少額ずつ購入していく方法も、価格変動リスクを軽減する有効な戦略です。

まとめ
本記事では、イーサリアム(ETH)の基本的な概念から特徴、仕組み、歴史、課題と将来性、そして購入方法まで幅広く解説してきました。ここで改めて、イーサリアムの重要なポイントを総括します。
イーサリアムは2013年にヴィタリック・ブテリンによって考案され、2015年に正式リリースされた革新的なブロックチェーンプラットフォームです。ビットコインが単なるデジタル通貨として機能するのに対し、イーサリアムはスマートコントラクト機能を持つプラットフォームとして設計されました。これにより、分散型アプリケーション(DApps)や独自トークンの開発が可能になり、DeFiやNFTなどの新しいデジタル経済の基盤が構築されました。
イーサリアムの最大の特徴は以下の点にあります
イーサリアムの主な特徴
- スマートコントラクト機能:プログラムによる自動実行契約の仕組み
- ERC規格:様々なトークンを作るための標準規格
- DApps開発基盤:分散型アプリケーションを構築できるプラットフォーム
- PoSコンセンサス:環境に優しく、効率的な合意形成メカニズム
- DeFiとNFTの基盤:新しいデジタル経済の技術的土台
イーサリアムの歴史を振り返ると、2021年には過去最高値を記録し、2022年9月には大型アップデート「The Merge」によりPoWからPoSへの移行を成功させました。2024年5月にはイーサリアムETFが承認され、機関投資家からの注目も高まっています。
現在のイーサリアムは、スケーラビリティの課題やガス代の高騰など様々な課題に直面していますが、シャーディングやレイヤー2ソリューションの開発など、これらの問題を解決するための取り組みが進行中です。技術革新の継続と開発者コミュニティの拡大により、イーサリアムの将来性は明るいと評価されています。
イーサリアムへの投資を考える際には、コインチェックなどの国内取引所での購入がおすすめです。特に長期投資を考えている方には、毎月一定額を投資するつみたて投資(ドルコスト平均法)が効果的な投資方法と言えるでしょう。
イーサリアムは、単なる投資対象としてだけでなく、次世代のインターネットとデジタル経済を形作る重要な技術基盤としての側面を持っています。その可能性と限界を正しく理解し、自分のニーズに合った形で関わっていくことが大切です。
最後に、イーサリアムは急速に進化し続ける技術です。本記事の情報も時間の経過とともに更新が必要になる可能性があります。常に最新の情報に注意を払い、自身で調査・検証することをお勧めします。

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